2液性エポキシの混合比がずれる。現場で見落とされがちな原因

生産技術の坂西です。
車載電装部品メーカーで18年、ECUやパワーモジュールの接着・封止工程を担当してきました。

2液性エポキシの硬化不良は、原因調査が長引く不具合の代表格です。
「配合比は指示どおりのはずなのに強度が出ない」という相談を、独立後も何度か受けました。

そういうとき、犯人は計量作業そのものより手前か後ろにいます。

反応が最後まで進まないと、強度はここまで落ちる

混ざり方が甘いと何が起きるのか。

宮城県産業技術総合センターの研究報告に載っている樹脂・接着剤・塗料等の硬化度評価に関する技術開発では、エポキシ接着剤の反応率と引張せん断接着強度の関係が測定されています。

反応率引張せん断強度
70%4.15 N/mm²
80%19.94 N/mm²
90%22.24 N/mm²
100%27.25 N/mm²

反応率70%の時点では、完全硬化の15%程度しか強度が出ていません。
80%まで進むと約4.8倍です。

反応が終盤に入るまで、強度はほとんど立ち上がらないわけです。
この強度はJIS K 6850が試験方法を定めた引張せん断接着強さです。

報告が変えているのは加熱時間で、混合比ではありません。
ただ、比率のずれも混合不足も、反応を最後まで進ませない点では同じです。

手で触って固まっていることと、反応が終わっていることは別の話です。

現場で見落とされやすい3つ

重量比と体積比の取り違え

配合比が重量比で指定されているのに、体積で量っているケースです。
比重が違えば、この2つは一致しません。

三協薬品が公開している常温硬化型耐熱エポキシは、重量配合が主剤100部に硬化剤20部、比重1.15と1.05です。
計算すると体積比は100対21.9になり、「100対20」を体積で量れば硬化剤が8.7%不足します。

比重の差はわずか0.1。
それでもこれだけずれます。

硬化剤の配合量が少ないほど、同じ誤差が効く

三菱ケミカルのエポキシ製品案内では、主剤100部に対する硬化剤の推奨配合量が、種類によって25部から120部まで開きます。

同じ1gの秤量誤差でも、25部を量るときと120部を量るときでは、比率への影響が約5倍違う計算です。
比率の小さい側の精度を軽く見ないほうがいいのは、このためです。

ミキサーを短いものに替える

スタティックミキサーは、エレメントを1つ通過するごとに液を2分割します。
タクミナのスタティックミキサーの解説によれば、分割数はエレメント数nに対して2のn乗です。

6エレメントなら64分割、12エレメントなら4,096分割。
2つ短くすれば分割数は4分の1です。

圧損や消耗品費を理由に短いミキサーへ替えると、混合度は指数で落ちます。

装置に替えても、残る要因はある

計量と混合を機械に任せれば、人の秤量誤差と手混ぜのムラは減ります。
ただし全部が消えるわけではありません。

  • 主剤と硬化剤で粘度の温度依存性が違えば、朝と昼で吐出の比率が動く
  • 休み明けにタンク内でフィラーが沈降していれば、最初の数ショットは比率が狂う
  • ミキサー内に前回の液が残って硬化していれば、量が合っていても混ざらない

装置化は原因を消す作業ではなく、管理項目を人から設備側へ移す作業です。
移した先を見なければ、不良の出方が変わるだけです。

ディスペンサーという装置が計量から吐出までのどこを引き受けるのかは、ディスペンサーという装置の意味と吐出方法をまとめたページが整理されていて分かりやすいです。

まとめ

  • 反応率70%では完全硬化の15%程度しか強度が出ない
  • 重量比と体積比の取り違えは、比重差0.1でも8.7%の配合ずれになる
  • 硬化剤の配合量が少ない材料ほど、同じ秤量誤差が比率に効く
  • スタティックミキサーの分割数はエレメント数に対して指数で増える

硬化不良の調査を計量作業だけに絞ると、たいてい迷走します。
材料の指定の読み方、ミキサーの選定、温度管理まで一度並べてみてください。
私が原因を外したときは、決まって一番疑いやすいところだけを見ていました。